病院には様々な科がありますが、「精神科」といえば看護師の中でもかなり特殊な領域になります。
「新卒で精神科はダメだよ、何も身につかないよ!」と先生に言われことはありませんか?
この記事を見ているということは、精神科への就職について興味があるけれども、もっと詳しく知って考えていきたいと思っているのではないでしょうか。
実際のところ、精神科に新卒で就職する人が少なく、殆どの方が一般科を経験してから転職してきます。その一方で精神科に最初から就職すると得られるものもあります。
この記事では、現役生精神科の看護師であるKAIが精神科看護師の実際を詳しく解説していきます。
・精神科看護師の役割とは?
・精神科で働くメリットとデメリットは?やりがいはあるの?
・働きやすいの?
・現役の精神科看護師4年目
・精神科スーパー救急病棟に勤務
KAIは精神科に特化した専門性の高い病棟で働いているので、ハッキリ言って精神科にはかなり詳しいです。
この記事を読むことで、精神科看護師の役割、働くメリットとデメリットを学べます。
就職を悩んでいる方は、この記事を読むことで精神科の魅力に気づくはず。
ちなみに、新卒で精神科看護師になることについて悩んでいる方は新卒看護師が精神科に就職することは正解なのか?【限られた人だけです】をお読みください。沢山悩みぬいたKAIが一つの答えを出しています。参考にしてください。
目次
そもそも精神科とは?
そもそも、精神科とはなんでしょう?
精神科とは、診療科の一つであり、
精神疾患、依存症、睡眠障害、不安障害、認知症など、精神に関連した疾患を扱う科になります。
統合失調症、うつ病、双極性感情障害、PTSD、アルコール依存など一度は耳にしたことがあると思います。
つまり、体の病気に起因しない疾患を扱うことになります。よく神経内科と間違われることがありますが、神経内科はてんかん、パーキンソン、高次機能障害などの治療がメインです。
急性期と慢性期の違い
精神科には急性期病棟と、慢性期病棟があります。
選び方について、結論から言うと、ワークライフバランスを重視するなら慢性期。バリバリ勉強したいなら急性期にしましょう。
急性期
自傷行為や強い興奮など症状が激しい状態のことです。
・例えば、幻聴が聞こえて家族に暴力をふるってしまった方。
・うつ病のうつ症状が強く自殺をしようとした方。
・パニック発作が収まらず過呼吸になってしまった方。
このような方々は早急に治療をする必要があります。救急車で来る方も多数いるため急性期と呼ばれています。お薬と安全な環境を提供し、休んでいただくことが治療となります。
急性期の精神科は、ザ・精神科!といったところでしょうか。精神科を学ぶのにこれほどうってつけな場所はないでしょう。
KAIが実際に働いている領域でもあり、毎日刺激的に仕事ができています。
慢性期
興奮や自傷行為はみられないが、症状により日常生活が困難となっている状態のことです。
・認知症の進行が進み、1人では生活できない方。
・統合失調症が進行し、自閉的となり人とのコミュニケーションが取れなくなってしまった方。
このような方々は治療を要しますが、金銭管理や掃除洗濯などの日常生活を行うスキルが低下しているため、生活のために支援を必要とします。そのため慢性期と呼ばれています。
精神症状が比較的落ち着いているため、不穏な状態になることは少なく穏やかな時間が過ぎます。ワークライフバランスを重視する場合にはうってつけで、残業はほぼありません。
精神科看護師の役割とは?
心理ケア
患者さんの心理的ケアは精神科看護師の最も必要とされるところです。例えば、最も有名なコミュニケーションスキルである傾聴といっても、
- 姿勢
- 態度
- 場所
様々な注意点があります。精神的に混乱している患者さんの気持ちを言語化し、感情表出を促すのは重要な心理的ケアです。
もちろん認知のゆがみを指摘し、適切な対処行動をとれるように促していくのも看護師の役割です。
精神機能はいくつか分類され、自己、自我、人格、思考、認知、感情、発達課題、家族機能など様々な役割を持ち非常に複雑です。
人間の複雑な精神機能を理解できるのは精神科看護師の専門性がなせる業です。精神科に就職して初めて身につくといってもいいでしょう。
日常生活支援
患者さんは症状の影響を受けて日常生活ができないので、セルフケアの支援がメインになります。
例えば、うつ病の方は症状が重いと、「汚いのでお風呂に入れないんです。みんなに迷惑をかけてしまう」と訴えます。
いやいや、汚いからお風呂に入ったほうがいいんじゃないか?と考えますよね。そこです。
つまり、症状に左右されることで、日常生活を行うための正常な思考ができなくなってしまうのです。
看護師はここに介入して清拭、入浴介助を行います。ご飯が食べられない人がいたり、認知症の方の急変もありますので、点滴や採血、吸引、酸素療法は日常茶飯事です。
手技が学べないと思われがちですが、むしろガンガン実施するので大学病院より身に付きます。
薬物療法の補助
精神科は薬物療法がメインになります。しかし、薬の種類は数多く、向精神薬、抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬…上げていくとキリがありません。
その中から、本人に会った薬物を探すことになります。精神科薬は副作用が多いので、効果と副作用の間を見極めることが重要です。本人の訴えをよく聞き、症状を観察する必要があります。
医師よりも看護師のほうが日常に寄り添って観察をしていますから、患者さんにあった薬物を探すのは看護師の役割であるといえます。意見がすごく通りやすいので楽しさもあります。
精神科で働くメリットは4つ
対人コミュニケーションスキルが上昇する
これは精神科で最も重要な能力であり、メリットです。
患者さんは症状に左右されているため、コミュニケーションがスムーズに取れない方がほとんどです。看護師はその中でコミュニケーションスキルを用いて信頼関係を築き、治療を円滑に進めるサポートをします。
特に、最近話題の発達障害の方など特徴的なコミュニケーションをする方には、看護師のコミュニケーションスキルの見せどころです。
患者さんが入院するたびに新たな出会いが生まれます。信頼関係を作り、治療を円滑に進めるかはあなた次第。
対人コミュニケーションスキルがグングン上昇します。
KAIが実際に使用している心理の技術については看護師のコミュニケーションスキルを向上させる方法【思考を誘導する技術】をご覧ください。仕事だけでなく人生に役立ち技術です。
感情をコントロールする能力が上がる
患者さんによっては大声で怒鳴ったり、人格を否定する言葉を言ったり、時には暴力が生じるときもあります。
しかし、感情をコントロールをして冷静に対処しなければなりません。経験を積むことで、自分の性格の傾向をしり、メンタル管理ができるようになります。
実は元々メンタルの弱かったKAIも働くようになってから、メンタルが鬼のように強くなりました。
今では怒鳴られても、なじられても何も感じません。普通の人にイライラすることがほとんどなくなるので、ほぼ仏様に近い状態です。感情を揺さぶれるもんならやってみろって感じです。
医師も看護師も穏やかな人が多い
メンタルに問題を抱えた方の治療をするわけですから、医療者側は非常にメンタルが落ち着いています。
新人に嫌味を言ってくるお局看護師、看護師を見下す医者、こういった人が本当に少ないです。
他の科で働いたことはありませんが、Twitterを見ていると、新人がいびられている姿がすごく想像できます。精神科は新人をいじめるとか本当にありません。
患者が不穏な時には、チームで対応するので、常にみんなで協力しようという雰囲気があります。働きやすい環境なのは間違いありません。
残業がない
ハッキリ言って残業はほとんどありません。
精神科は身体科に比べて処置が少ないので、時間内にほとんど終わります。KAIが働いているのは救急病棟なので、救急が来た場合は残業することもありますが、それでも週に1回程度です。
残業がないのでワークライフバランスが充実します。
精神科で働くデメリットは2つ
精神的に辛いことが多い
例えば、精神症状が激しいと暴言や暴力を受ける機会があります。適切な対処が求められますが、慣れるまではなかなかキツイです。
また、尿や便が垂れ流しだったり、風呂に何か月も入っていない方もいるので、セルフケアの援助自体がかなりきついという事もあります。
いづれにせよ、他の科とは違う部分できついな、と感じる場面が多いですね。
安全管理が難しい
精神科特有ですが、いわゆる暴力的な患者さんもいます。対応は基本的に男性が複数でしますが、それでも緊迫した空気になることもあります。安全管理は精神科看護師に求められる能力の一つですが、苦手な人は対応は難しいです。
精神科は男性が多いですが、それでもまだまだ女性の多い職場です。KAIの職場でも男性は3割程度で、まだまだ女性の多い領域であることは間違いありません。
精神科が向いている人とは?
では精神科看護師が向いている人とはどんな人でしょうか。今この記事を読んでいる貴方は精神科に向いているのでしょうか?
患者さんとゆっくり向き合いたい
精神科は入院期間が1か月以上かかるなど、他の科に比べて入院期間が長いという特徴があります。精神科では疲弊した精神をしっかり休ませ、ゆっくり治療していきます。看護師と患者さんの関係性がそのまま治療につながります。
そのため、ガンガン入退院を促進する忙しい場所より、じっくり患者さんと向き合いたいという人の方が向いています。
1対1の人間関係が重要で、精神科はプライマリー性を取っている病院がほとんどですから、本当に看護師の能力次第になってきます。
観察力に優れる
精神科はコミュニケーションスキルだけでなく、観察力が求められます。普段の様子を知り、「あれ、今日はなにか雰囲気が違うな…。話を聞いてみよう」と気付けるかが大事です。
例えば、前日まで他の患者さんと楽しそうに話していたのに、翌日に急に怒りっぽくなったり興奮することもあります。
その際、薬の飲み忘れなのか、きっかけがあったのか、眠れていないのか…。
原因を探り対処法を考えるのが重要です。周りをよく見て観察する能力がある人は非常に向いていますね。
内科に勤めていた人
これはKAIが勝手に大歓迎しています。なぜなら精神科と内科疾患は密接に関連しているからです。
精神科の副作用の代表的なものとして
- イレウス、便秘
- 水中毒
- 尿閉
- 肺炎
などが挙げられます。もちろん急変もよくありますよ。精神科に就職する人の中には、身体科がしんどいとか勉強したくない、という理由の人もいるのです。そのため、新卒で来ると身体疾患に対して曖昧な知識で対応しがちになってしまいます。
精神科看護師としては内科の経験がある人が来てくれるのはとても心強いのです。速攻で主任間違いなしです。
精神科看護師はやりがいが多い
ここまでメリットとデメリットを書きましたが、KAIは非常にやりがいを感じる職場であると感じています。
精神科は一般科のように答えがないため、とても悩みます。その分退院後の生活がうまくいくとすごく嬉しいんです。救急できて精神症状が激しかった方が、外来で笑顔で挨拶してくれるだけで泣けてきます…(笑)
患者だけでなく家族のフォローも重要です。本人だけでなく家族にも問題があるパターンが多いからです。家族全体の機能を見る必要があります。
精神科はタダ薬を飲んで良くなって退院するだけではありません。その難しさが癖になり、やりがいをとても感じるのです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
1.精神科に急性期と慢性期がある
2.急性期はバリバリ勉強、慢性期はワークライフバランスを重視
3.精神科看護師の役割は日常生活の支援と薬物療法の補助
4.メリットは、コミュニケーションスキルが上がる、感情コントロール能力が上がる、医師も看護師も穏やかな人が多い、残業がない
5.デメリットが、ストレスがたまりやすい、女性は怖い場面が多い
6.残業がなく、人間関係がいいので働きやすい。
結論として、精神科はほとんどの人におすすめです。急性期と慢性期によって違いはありますが、コミュニケーションスキルが身に就くのは間違いありません。
また、身体科のように残業ばかりではなく定時に帰れるので、ワークライフバランスが充実します。周りのスタッフも穏やかで落ち着いた方が多く、働きやすいのは間違いないでしょう。
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ここまで読んでいただき、ありがとうございました。