看護師の上位資格に値する保健師。
4年生大学なら保健師コースを受けて合格する必要があり、専門学校なら保健師養成学校に行く必要がありますね。
保健師コースは、ただでさえ忙しい看護学生生活がさらに多忙になります。国家試験も1つ増えますよね。
しかし、この記事を読んでくれているという事は、保健師に対する興味があるのではないでしょうか?
保健師の資格を取るとどんなメリットがあるか、少し考えてみてください。
もし、「看護師としての就職を考えているので保健師は取るつもりないです。」
という方がいたら、ストップ。考え直してください。
保健師就職を考えていなくても、保健師資格は絶対に取るべき資格です。今回は、実際に保健師資格を持ち、看護師として働いているKAIが保健師資格をとるべき理由を解説していきます。
・看護学生だけど保健師を取ろうか悩んでいる、ダブル受験は大変そう。
・看護師と保健師の違いを知りたい。実際どっちが上なのか知りたい。
・保健師資格を取ることについてメリットやデメリットを知りたい
・保健師就職を考えているが、保健師をとるのが大変じゃないか心配
・地方公立大学出身
・看護師、保健師、第1種衛生管理者
・現役の5年目看護師、病棟主任、プリセプター経験、教育委員会所属、実習指導経験
・精神科スーパー救急病棟勤務
・地域保健師、産業保健師の友人あり
結論から言うと保健師資格を取得すると、あなたの働く場所の選択肢が増え、給料も上がり、知識も増えて、いいことづくめです。取らないと本当に損です。
もしまだ看護学生になったばかりの方がいれば、看護学生は忙しい?辛い学生生活を乗り越えるためには‥を読んで学生生活に備えてください。
目次
そもそも看護師と保健師の違いとは?
資格 | 働く場所 | 役割 |
---|---|---|
看護師 | 病院、クリニック、訪問看護ステーションなど | 病気やケガをした方の注射、採血など看護を行う |
保健師 | 保健センター、地域包括、企業など | 病気やけがの予防を担い、健康相談に乗って保健指導などを行う |
上図のように看護師と保健師は働く場所や、担う役割が異なってきます。
「保健師」とは「名称独占」であり、公衆衛生や予防医療の観点から「保健指導」に従事することを業とするものを指します。
簡単に言うと、地域や集団の健康を維持するために、健康診断や保健指導、公衆衛生施策を考えることが仕事になります。あくまでも「名称独占」であり、「保健師」でなければできない、という物はありません。看護師でも保健指導は可能です。
しかし、この「保健師」という資格は非常に強い力を持つ国家資格です。看護師は通常のカリキュラムで看護師が取得できるのに加えて、勉強を少しするだけで資格が取れます。
国家資格のダブルライセンスは就職に有利です。優秀であるという証明になりますからね。
保健師と看護師はどっちが上なの?
難しい質問ですが、
保健師を持っている=勉強した、優秀、統計や疫学を知っている
というイメージはあるので、社会評価的には保健師の方がよい印象です。
保健師 | 看護師 | |
給料 | 初任給は安いが、昇給が安定。公務員や企業勤務だと福利厚生がしっかりしているケースが多い。 | 初任給は高く、夜勤手当もあり、保健師より高い。しかし、昇給が少なく、給料の上り幅が少ない。 |
WLB(ワークライフバランス) | 月~金の固定勤務のため、時間が決まっており、WLBは充実しやすい。 | 勤務時間がバラバラで夜勤もあるため、疲労はたまりやすい。その代わり平日休みなどメリットもある。 |
簡単な特徴を上図に示しましたが、働き始めは給料の差はほとんどありません。夜勤がない分保健師の方が低いことが殆どです。ただし、看護師は昇給が少ないため長く務めると保健師の方が高くなることもあります。
ワークライフバランスで見ると、固定勤務の保健師と、シフト制の看護師で全く異なってきます。時間が決まっているほう保健師の方が予定は立てやすいですが、役所や旅行など平日に行くのが好ましい場所に幾分については看護師の方が上手です。
結局のところ、自分がどんな働き方をしたいか。保健師と看護師では役割が違うため、何をやっていきたいのかが重要です。
看護師が保健師を取得するメリットとは?
資格手当がつく
看護師として就職しても、保健師資格で手当がつくことがあります。KAIの勤めている病院では保健師資格で給料が1万円UPします。看護師が給料を1万円あげようとすると、夜勤を増やすか3年以上働いて基本給を上げるしかありません。
最初から同期より給料が高いというメリット。これはめちゃくちゃでかいですね。
病院によって違いますが、職員の能力をしっかり評価している病院ほど資格手当があります。
保健師という箔がつく
看護師は病棟業務をしているだけではありません。多職種連携は必須ですし、退院後の生活を見据えた支援も立派な看護師の役割です。実は看護師として発言するよりも、「保健師」として発言するほうが重みがあります。なぜなら「看護師」よりも「保健師」のほうが地域生活支援の能力が高いからです。
保健師資格を取得するには、さまざまなところに実習に行く必要がある上に、病棟では関わらないような人と連携を取ります。患者の地域生活を考える能力がそもそも違うわけです。(看護師が低い、というわけではありませんよ…。)
KAIの勤める病院の看護部長が言っていた言葉でKAIが感動した言葉です。
「資格は箔がつくだけ。ただの看護師が言うより重みがでるからとってるだけ」
この部長は、看護師、保健師、ケアマネ、PSWを持っています。上に立つ人が言うと説得力が違いますよね。ただの「看護師」より「保健師資格を持つ看護師」の方が箔がつきます。
就職や転職に有利で働く場所の幅が広がる。
病棟で働いていて嫌になったり、結婚してシフト制の勤務がつらくなったり、今後の人生で看護師を辞めたいときが出てくると思います。
そんな時に保健師資格があれば、公務員に慣れたり、企業保健師に慣れたり、働ける場が広がりますよね。
保健師の需要は非常に高いので、看護師として働いた後に保健師に転職する人も多いです。あなたの人生の幅を広げるという意味でも保健師は非常に便利な資格であるといえますね。
看護師が保健師資格を取るデメリット
保健師資格を取ることについて、デメリットはほとんどないのですが、一応解説します。
看護学生生活が忙しくなる
取るべき授業、課題、実習が増えます。つまり学生生活がとても忙しくなる、という事です。
保健師は疫学や統計を学ぶ必要があり、公衆衛生に関する勉強が増えます。さらに看護師の時は触れなかった領域の学習が増えます。そのため、勉強量や課題が明らかに増えるのです。
また、保健師特有の「地域診断」という作業をしなければなりません。これは「地域に関する情報収集、アセスメントをして、どんな地域かを理解する」という保健師の技術です。この授業がずっとグループワークなんですよね。他人とスケジュールを合わせないといけないし、要領のあまりよくない人がいたりして、本当に面倒くさいです。
実習は、保健所、保健センター、地域包括支援センターでした。実習は実習自体より準備が本当に大変です。授業以外の時間で自主的に作業をする必要があるので、必然時間がかなり取られます。国家試験の勉強、卒業研究と両立する必要があるので、そこがネックになります。
看護師国家試験とのダブル受験が必要になる
4年生大学であれば、看護師国家試験を受ける年に、並行して保健師国家試験をうける必要があります。つまり、ダブル受験が必要となるんですよね。
その分勉強が必要になるので、勉強時間が増えて忙しくなります。また、保健師は看護師資格がないと取れないので、看護師国家試験にしっかり受からないといけません。保健師だけ合格して、看護師を落ちた場合は、ただの人、になるわけですね…。
ただし、経験者として語ると、保健師国家試験は大して難しくありません。看護師国家試験と同様でちゃんとQBをやれば受かります。保健師実習は内容が濃いのでやったことや法律は大体覚えています。
なので保健師を取ろうと悩んでいる時点で、おそらく余裕です。そもそも勉強が嫌な人は保健師資格を取ろうとは思わないですからね(笑)。
スケジュールの不安があると思いますので、KAIの大学生時代のスケジュールを【就職先が決まらない?】看護学生の就職活動について実体験で解説します!【面接の質問も公開します】~で解説しているのでぜひチェックしてみてください。
逆に言うと、デメリットはこれくらいしかありません。資格をもう一つとれるのですから、忙しくなるのは当然ですね。
KAIも計画的にこなしてダブルライセンスになってますから、きっとあなたもできるはずです。
KAIが考える保健師資格のメリット
次にKAIが考える保健師資格取得のメリットを解説します。
保健師の役割が分かる
看護師として勉強していると、保健師の業務がよくわからないんですよね(笑)
KAIも保健師資格を取るまでは、公務員としてお堅い業務をしているイメージくらいしかありませんでした。保健師コースに行って、実習に行って、初めて保健師の仕事の概要がつかめました。保健師は地域生活に不可欠なサービスを提供していますが、看護師はあまり把握していません。
せっかく同じ看護職ですから保健師の役割をしっかり把握しておきましょう。退院支援など、保健師資格を持っていない人には思いつかない視点で考えることができますよ。
看護師より視点が広がる
地域生活を支えるには、
- 介護保険
- 地域包括支援センター
- 保健所と保健センターの違い
- 保健師訪問の内容
などなど、様々なサービスを理解し提供する必要があります。
病棟だけで完結すればいいのですが、今のご時世、そううまくはいきません。病院は早く入退院を回して加算をとらないといけないですから、必然退院支援は重要な項目になります。入院時から、使えるサービスを考えて看護をする必要がありますね。
病棟で一生働き続けるなら問題ありませんが、おそらく大半の看護師は病棟をいづれ辞めることになるでしょう。そして新しい勤務先を考えた時、訪問看護、施設、役所…。
病棟以外の勤務先に視点を広げると、そのほとんどが「人間」が地域生活を送ることを支える役割を担う場所ばかりなんですよね。
なので、将来のキャリアを考えた時にも、保健師資格を持ち視点を広げておくことは重要なんですね。
保健指導の実践ができ、人前で発表するのに慣れる
あなたが看護学生の時、一番緊張したのはどんな時ですか?
KAIが一番緊張したのは実習先の看護師に行動計画を発表するときです。何を言われるかドキドキして冷や汗をかきながら発表していました。
あなたも同じですかね(笑)
KAIが看護師として働き始めて気づいたことは、看護師は皆プレゼンや発表が下手すぎるという事です。
学生時代に結構グループワークをやらされるので、経験は積んでいるはずです。しかし聞いていて意味が分からなかったり、発表の内容がめちゃくちゃなことがよくあります。あと緊張がすごく伝わってきて、見ていてハラハラします。
その点、保健師コースに行くと発表や指導がめちゃくちゃ得意になります。
理由としては、保健師や住民に対する保健指導を何度も経験していること、保健活動の計画内容のプレゼンを何度もしていることが挙げられます。
例えば、KAIは「認知症に関する講義と予防運動を実施してください。」というお題で30分くらい時間をもらって実際に10人くらいの住民の前で1人で講義をしました。
実習先の保健師に何度も予行演習して、先生にアドバイスをもらって、修正しながら保健指導を行っていくのです。当然人前で話す能力が養われます。
また、保健活動の計画内容のプレゼンでは、「どの点が問題で、どんなメリットがあるから、どの数字を目安にして、どのように行動していく」という点を意識します。国の予算を使って活動するわけですから明確な計画が必要なんですよね。
これらの能力は看護師だけでは磨かれず、保健師コースに行ったからこそ身についた能力です。
KAIは現在教育委員会として、新人の前で講義をしますし、プレゼンも得意です。
こういった人前で話せる能力は学生時代に磨いておかないともったいないです。社会人になってから後悔するより、学生時代にどんどん失敗して学ぶべきですね。
就職先の選択肢が増える
看護師としての就職先のほかに、保健師としての就職先が増えます。
- 産業保健師
- 行政保健師
- 病院保健師
共通しているのは、夜勤業務がなく残業もほぼないため、ライフワークバランスが取れている点です。
看護師として病棟で働いていると最初は給料が良いのですが、だんだん昇給しなくなり、夜勤がしんどくなります。加えて、結婚や出産があると子育てのことを考えて、夜勤業務がなく時短で働ける職場が欲しくなります。
そんな時に保健師資格があれば、単純に就職先の選択肢が増えます。今後の人生を考えると、保健師資格を持っているだけで少し気楽になるのではないでしょうか。
実はもう一つ国家資格が手に入る
実は保健師を持っていると「第一種衛生管理者」という資格を試験免除で取得することができます。職場の衛生管理をする役割を担うので、産業保健師などで活躍することができます。
これは職場との相談になるのですが、単純にトリプルライセンスになるので更に活躍の場が広がります。
国家資格を1つ持っているだけでも強いですが、どうせなら3つ持ちたくないですか?KAIはもちたいです(笑)。
最後に
いかがだったでしょうか?
- 看護師と保健師では働き方が違うため自分に合った選択が必要
- 保健師を取得すると、資格手当、箔がつき、就職や転職に有利になる
- 保健師資格を取得するには勉強と時間が必要なので学生生活が忙しくなる。
- 4年生大学の場合は看護師国家試験とダブル受験が必要になることがあるが国家試験自体は難しくないので安心すべし。
- KAIの考える保健師取得のメリットは保健師の役割が分かる、人前での発表が得意になる、転職に有利になる、第一種衛生管理者という国家資格が取れる
KAIは保健師資格を持っていますが、保健師として働く予定はまだありません。病棟5年目ですしね(笑)
看護師として働く方が刺激的ですし、看護は臨床だと思っているので現在は臨床で働いています。しかし、病棟業務をずっとしていても出世は遠いですし、肉体労働なので出来れば早めに引退したいところです。
資格を持つことは選択肢を増やし自分の人生をよくすることにつながります。忙しい学生生活の中で、保健師資格をとることは非常に大変です。しかしそれ以上に、学生生活の半年をささげて、残りの人生すべてが豊かに過ごせる可能性があるなら、絶対に取るべきです。
現在保健師資格を取ろうか悩んでいる方、将来保健師として働きたいと思っている方はぜひ頑張ってください。